PiDP-10 は、MIT AI ラボのハッカーの遊び場となった DEC の 1968 年型メインフレームを再現するPDP-10のレプリカです。
https://obsolescence.dev/pidp10.html
PiDP-10とは
The MagPi というThe official Raspberry Pi MagazineのサイトでPiDP-10が紹介されました。
https://magpi.raspberrypi.com/articles/pidp-10
2024年、オスカー・ヴァーミューレン(Oscar Vermeulen)氏は、デジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC) のPDP-10ハードウェアを忠実に再現した3分の2サイズのレプリカPiDP-10を作成しました。それは、PDP-10 の魅力であるライトの列とトグル スイッチを備えた美しいコンソールパネルです。
PDP-10は、1967年にDECが開発した36ビットの大型コンピュータです。そのマシンは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能研究所(AI Lab:Artificial Intelligence Laboratory)やProject MAC、スタンフォード大学の人工知能研究所(SAIL:Stanford AI Lab)など、多くの大学や研究機関が導入して人工知能の研究者らに人気がありました。MITは、DEC標準のTOPS-10 OSを採用せずにITS(Incompatible Timesharing System)というタイムシェアリングOSを独自に開発して使用していました。そして、Maclisp、Emacs などを開発しました。
オスカー氏 は MIT の経験を再現したいと考えていました。それには、MITのカスタム オペレーティング システムであるITSのエミュレートが必要です。しかし、ITSの運用は1990年代にすでに終了しています。幸いなことに、Lars Brinkhoffらが推進するITS再構築プロジェクトによりITS(Incompatible Timesharing System GitHub)が復元されました。そして、OscarとLars Brinkhoffが出会ったとき、PiDP-10 が誕生しました。
彼らの目標は、コンピュータの歴史を示すことではなく、コンピュータの実際の体験を生き生きと伝えることです。PiDP-10を使用すると、1960年代後半から1970年代にかけて進化したAIラボのハードウェア、ITSオペレーティングシステム、および数百におよぶアプリケーションの見どころを操作できます。
PiDP-10のエンジンはラズパイ
レプリカのコンソールの裏側には、Raspberry Piを接続しSimHシミュレータでPDP-10をエミュレートします。そして、PiDP-10はこのエミュレータに接続するコンソールとなります。
キットの組み立て → 組み立て手順 → Piを準備する に下記のように書いてあります。
Any Pi from the Pi Zero 2 on up can be used for running just the PDP-10. A Pi 4 is the minimum when you want to use the extra AI Lab hardware. And a 5 is recommended to run everything all at once. Remember, a full AI Lab setup runs a PDP-10, two PDP-11s, a PDP-6 plus many user terminals with graphics terminals. If you want all that, all the time, use a Pi 5.
【要約】
Pi Zero 2 以降の Pi は、PDP-10 のみを実行する場合に使用できます。追加の AI Lab ハードウェアを使用する場合は、Pi 4 が最低限必要です。すべてを一度に実行するには、5 が推奨されます。AI Lab の完全なセットアップでは、PDP-10、2 つの PDP-11、PDP-6、およびグラフィック ターミナルを備えた多数のユーザー ターミナルが実行されることに注意してください。これらすべてを常に実行したい場合は、Pi 5 を使用してください。
Raspberry Piを別途用意する必要があります。
(PiDP-10 には、Raspberry Pi OS の64 ビット バージョンが必要です)
項番 | Raspberry Pi | CPU | メモリ | 電源 |
---|---|---|---|---|
1 | Pi Zero 2W | Arm Cortex-A53 @1GHz | 512 MB | 5V 2.5A |
2 | Pi3 Model B | Arm Cortex-A53 @1.2GHz | 1 GB | 5V 2.5A |
3 | Pi4 Model B | Arm Cortex-A72 @1.5GHz | 2/4/8 GB | 5V 3.0A |
4 | Pi5 | Arm Cortex-A76 @2.4GHz | 2/4/8 GB | 5V 5.0A |
- Pi Zeroでは、PDP-10マシンをエミュレートしてランプをLチカする程度のパワーしかないと思われます。
- Raspberry Pi3は、著書『超マシン復活』でKLHエミュレータでTOPS-20 OSをマルチユーザーで走らせました。2ユーザーぐらいは楽勝で動作していました。PiDP-10のSimHシミュレータでITS OSを動作させると、どの程度のパフォーマンスになるか不明です。
- Raspberry Pi4は、PiDP-10でITS OSをマルチユーザーで使用する最低限な構成です。
- Raspberry Pi5は、PiDP-10でAI Lab の完全なセットアップで各種機器を動作させるための推奨構成です。メモリは多いほうが望ましいと思われます。
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