次世代マイクロプロセッサ
1995年、世界初のマイクロプロセッサ4004を開発した嶋正利さんが新しい本を書いたことを知り読みました。
- 『次世代マイクロプロセッサ』 マルチメディア革命をもたらす驚異のチップ
- 嶋正利 著
- 日本経済新聞社
- 1995年2月24日 1版1刷
目次
第1章 マイクロプロセッサとは
第2章 マイクロプロセッサはどのように生まれたか
第3章 マイクロプロセッサの技術的将来展望
第4章 マイクロプロセッサとコンピュータ業界
第5章 マイクロプロセッサの発展がもたらすもの
はじめに
本書は、マイクロプロセッサの進化とコンピュータ業界の動向などが書いてあり、大変興味深く読むことができました。
1969年8月に世界初の4ビットマイクロプロセッサ4004が発明されてから、25年が経過した。
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この本は、マイクロプロセッサに興味を持たれている人に書いているので、一種のデータベースとして、マルチメディアの本質でもあるが、必要なところを必要な時に、利用して頂ければ幸いです。
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マイクロプロセッサは人類に与えられた「知の道具」である。
マイクロプロセッサはどのように生まれたか
4ビットマイクロプロセッサ4004のホッフのアイデアと誕生について書かれてました。
私が提案した10進数データ用のマクロ命令で構成している10進コンピュータを4ビットのマイクロな命令で構成する2進コンピュータに変更しようという提案であった。これが世界初のマイクロプロセッサ4004の産声であった。
電卓の論理方式の進化について書かれています。
- 配線で論理を実現した固定式のハードワイヤードランダム論理方式
- マクロ命令でプログラムを組むことにより論理を実現したストアードプログラム論理方式
- マイクロなレベルでの命令を使用するマイクロプログラム論理方式
インテル社のホッフの提案は、嶋さんのマクロ命令方式をマイクロなレベルの命令に進化させたものでした。
結局、仕様の作成と論理設計は私1人でやることになった
嶋さんは、短期間に大きな仕事をしたことがわかります。
マイクロプロセッサの技術的将来展望
マイクロプロセッサの性能は下記で決まる。
処理時間=クロックサイクル×CPI(命令の平均実行サイクル)×命令ステップ数
- クロックサイクルを減らすために、動作周波数を上げる
- CPI(Cycle Per Instruction)を減らすために、パイプライン制御技術やスーパースカラ技術の論理構成方式の工夫する
- 命令ステップ数を減らすためには、命令セットアーキテクチャとコンパイラの改良をする
「RISCへの道」で、RISCプロセッサの概念が説明されています。
RISC型プロセッサは高性能化への一つ手段であり、その本来の概念は1サイクル当たり1命令の割合で実行できる非常に高速なクロックサイクルのマシンを作り出すことであった。
RISCアーキテクチャへの基本的な要求が示されてます。
- 命令は1サイクルで実行
- パイプラインの実現性に適している
- コンパイラに最適化された命令体系
- メモリ操作はロード命令とストア命令のみ
- レジスタに対する命令は3アドレス方式
- すべての命令の長さは32ビットの1語
IBM801がRISCプロセッサの第1号だそうです。
RISC型プロセッサはIBMにより研究開発され、バークレー大学とスタンフォード大学でマーケティングされることによって成功したマイクロプロセッサであると言って良い
RISC vs CISCの開発競争が話題になったことがありますが、どちらも良い技術でできています。
2016年現在をみると、マーケティングで成功したARMアーキテクチャが低消費電力を実現できることから携帯用の端末のデファクト・スタンダート的な存在になった感じがあります。携帯電話・スマートフォン・タブレットなどは、ほとんどARMマイクロプロセッサを搭載しています。