電子書籍について
2018年5月、Re:VIEWについて調べていたら「電子書籍で生き残る技術」という気になる本を発見しました。発行が2010年なので少し古い内容ですが、とても興味深く読むことができました。
私は電子書籍に興味を持ち、実際に使用して本当の価値を体験しようと考えて電子書籍端末を購入しました。
- 2011年 : iPad2のi文庫HDアプリ
- 2012年 : Kindle Fire HD端末
- 2014年 : Kindle Voyage端末
実際に体験してみると、小さな電子書籍端末の中にいろいろな書籍が入り、細切れの時間を利用して読書ができるてとても気に入っています。特に、e-inkディスプレーを搭載したKindle Voyageは、紙の本と同じような感覚で読むことができます。難解な語句があった場合には、すぐ辞書で確認できるのでとても便利です。
2018年になってから、Re:VIEWという電子書籍執筆ツールを知っていろいろと調査していました。そんなときに、この「電子書籍で生き残る技術」という本に巡り会いました。
電子書籍で生き残る技術
紙との差、規格の差を乗り越える 「電子書籍で生き残る技術」
本の情報
- 電子書籍で生き残る技術
- 川崎堅二 土岐義恵 共著
- 発行所: 株式会社 オーム社
- 平成22年11月25日 第1版第1刷発行
目次
第1章 電子書籍、群雄割拠時代の到来
第2章 電子書籍がたどってきた道
第3章 電子書籍で利用されている技術
第4章 電子書籍で生き残るための技術
エピローグ 電子書籍で生き残るために
電子書籍がたどってきた道
電子書籍ビジネスの初期の状況を説明しています。
- 1993年 : NEC デジタルブックプレーヤ DB-P1
- 1995年 : 電子書店パピレス開設
- 2000年 : 電子文庫パブリ開設
- 2003年 : 松下電器 電子書籍端末 シグマブック(Σ Book)
- 2004年 : ソニー リブリエ EGR-100EP
リーダーと並行して自社でコンテンツサービスにも乗り出した。しかし、コンテンツを持つ出版社サイドから十分な協力が得られなかったこともあり独自サイトが用意した電子書籍はわずか数百点程度であった。
このため両者の製品は、ともに高機能の電子書籍リーダーであったにも関わらす、数年後には両社とも電子書籍リーダーの製造、2009年までにはコンテンツ販売ビジネスからも完全撤退している。
このころが、電子書籍の幕開けでビジネス的に開花しませんでした。そして、2010年ぐらいからが電子書籍元年でビジネス的に広がっていきます。
電子書籍リーダーも百花繚乱
第2章に日本の電子書籍リーダーの状況(2010年当時)について書いています。
日本ではiPad一色といった感じだ。そのような中、ソニーは、アメリカで2006年から発売している「Sony Reader」の最新型を、2010年中に日本にも上陸させることを発表している。
(中略・・・)
東芝もWindows7パソコンベースの「libretto W100」を発売しており、海外でもGoogleのアンドロイド(Android)搭載の電子書籍「FOLLO 100」を発売する予定だ。
富士通はカラー電子ペーパーを搭載したFLEPiaを発売、NECも発売日は未定ながらもアンドロイド端末「ライフタッチ」を発表した。
この本が書かれた2010年から8年が経過した現在の状況を調べてみました。
ソニーのSony Reader端末は2010年12月に発売しましたが、2013年モデルを最後に新製品の発表はなく、2018年現在は生産を終了しています。ソニーの電子書籍・電子コミックストア(Reader Store)はサービスを継続していますが、Sony Reader端末からのコンテンツ購入サービスを終了しました。ソニーの電子書籍専用端末は消滅し、Android端末のアプリに置き換わりました。
富士通はカラー電子ペーパーを搭載した「FLEPia(フレッピア)」を2009年に発売しましたが、2018年現在は販売終了しています。また、電子書籍サイト「ふれっぴ屋」は2012年3月29日に電子書籍販売終了となりました。
東芝はAndroidタブレット端末「FOLIO 100」を2010年に発売しましたが、販売終了しています。
NECはAndroidタブレット端末「LifeTouch」を2010年に発売しました。LifeTouchは、企業向けのビジネス用端末でしたが、アンドロイドアプリで電子書籍を読むことができます。2018年現在、LifeTouchは販売終了となっています。
2018年現在、電子書籍端末はAmazonのKindle(キンドル)と楽天のKobo(コボ)が有名です。それぞれ、シリーズ化して複数機種を販売しており、コンテンツ(書籍)もKoboならKoboストア、KindleならKindleストアからダウンロードすることができます。
日本の大手メーカーが参入した電子書籍端末は、この8年の間に撤退することになりました。そして、充実した電子書籍ストアをもつ、Amazon Kindleと楽天 Koboが主流となっています。
電子書籍で利用されている技術
電子書籍の三つの技術を説明しています。
- 電子書籍リーダーの機能
- プラットフォームが提供するサービス
- 電子書籍データの形式
電子書籍リーダーの機能
- 表示機能 : E Ink(グレースケール)/カラー液晶
- 通信機能 : 携帯電話通信網/無線LAN
- ユーザーインターフェイス : タッチパネル/キーボード/ハードウェアボタン
専用端末(Kindle, Nookなど)か、多目的端末(iPadなど)か?
私は最初の頃、iPadやAndroidタブレット端末にKindleアプリをインストールして使っていました。しかし、最近は専用端末の方が使いやすく気に入っています。特にKindle Voyageは、E-Inkで目に優しいうえにページ送りボタンがありますので、読書に集中して読み進めることができます。
プラットフォームが提供するサービス
- 電子書籍データや顧客管理データの保持
- 電子書籍販売サイト
- 顧客管理と課金
- 通信基盤
- DRM 違法コピー防止
- 紙版書籍の電子書籍変換
数多くの電子書籍販売サイトが出現していますが、サービスを停止してしまったサイトもいくつかあります。長く安心して利用できるサイトを使いたいですね。
私は、Amazon Kindleを中心に利用しています。購入した電子書籍は端末にダウンロードしますがサイトに保管しており、いつでも再ダウンロード可能です。
電子書籍データの形式
- PDF(Portable Document Format) : アドビのデータ形式 ・・・ ウェブで広く使われている
- .book : ボイジャーのデータ形式
- XMDF : シャープのデータ形式
- EPUB : 電子書籍標準団体IDPF(国際デジタル出版フォーラム)のデータ形式
- AZW : アマゾン Kindleのデータ形式
電子書籍で生き残るための技術
この章では、この混乱の電子書籍時代に「生き残る」ために重要となる技術にターゲットを当てる。「生き残る」ということは、「すでに生きていて、さらに今後も生き続ける」ことだ。ここでも、「すでに書籍の世界で生きていて、今後もそこでビジネスを続けていく」ということを考えている組織や人、具体的には出版社、編集・DTPプロダクションや著者を対象に、生き残っていくために重要な技術、それも目先ではなく本質的なところで必要となる技術と考え方を紹介していく。
そのコンセプトは、「一つのフォーマット、プラットフォームのとりこにならない」、「デジタルの世界では先を行っているソフトウェア開発の手法から学び、電子書籍時代に合った作り方をしよう」というものだ。
この章は、私が一番気にしていることを取り上げています。
リーダー、プラットフォーム、フォーマット
この本が書かれた2010年の電子書籍環境は混迷していました。
- 電子書籍リーダー : iPad, Kindle, Sony Reader, Nook , etc…
- プラットフォーム : 凸版印刷, 大日本印刷, アップル, シャープ, アマゾン, etc…
- フォーマット : XMDF, .book, EPUB, AZW, PDF, etc…
2018年現在も基本的な状況に変化はありません。
違いがあるのは、電子書籍リーダーの状況です。期待した日本の大手メーカーは撤退してしまいました。大手メーカーは、電子書籍専用端末よりもスマートフォン普及によりAndroid端末の開発に集中しています。
ワンソースマルチフォーマット
ひとつのコンテンツを複数のフォーマットに対応する取り組みについて記載しています。
章見出し、大見出し、小見出し、本文などのタグ付けを行った構造化データを交換用フォーマットとして、ターゲットフォーマットに変換するわけです。
ソフトウェアの世界で、ひとつのソースコードをそれぞれのプラットフォーム(Linux, Windows, etc…)でコンパイルしてターゲット・プラットフォームで動作する概念に似ています。
トップスタジオての制作体制
株式会社トップスタジオにおける、構造化を利用した自動組版システムと共同執筆システムを紹介しています。武藤健志さんのインタビューも掲載しています。
構造化に対応したタグ付きテキストRe:VIEWで文章を管理して、さまざまなフォーマットに変換します。
Re:VIEWについては、下記ブログに書いています。
版管理を実現する技術
電子書籍の版管理は、デジタルの利点を活用してバージョン管理システムで行います。
■ バージョン管理システムの動作
バージョン管理システムでは、ソースファイルは原本が保存・管理されるリポジトリと呼ばれる場所に置かれる。
各ユーザーは、リポジトリからソースファイルをチェックアウト(コピー)して手元に持ってきて、そこで修正を加える。
修正を加え終わったらリポジトリ内のソースファイルに自分の行った修正を反映させるコミットを行う。
バージョン管理システムを使うと、「誰が」、「どのタイミングで」、「どこを修正したか」などの履歴も完全に保持される。
ソフトウェア開発を職業としてきた私に、とても自然なことです。ソフトウェア開発ではSubversionやGitのバージョン管理システムにより、ソースコードを管理していました。
電子書籍はデジタルデータなので、ソフトウェアと同じような管理ができるわけです。
最後に
電子書籍を取り巻く環境は、この本が書かれた2010年と大差はないと思います。
私は、Kindle Fire HD/Kindle Voyage端末を購入してから、紙の書籍の購入は減って電子書籍に変わり読書量が増加しました。
今後、電子書籍データの形式が統一されていくのか、複数の規格が乱立していくのか気になるところです。すでに購入した電子書籍は、いつまでも使用できないと困ります。