本文へスキップ

《 A Engineer Den 》知的冒険の旅へ出かけよう

#1 レトロOSワールド【概要】 Super machine revival #1 DEC TOPS-20 Retro OS World


概要

本書の位置づけ

『ラズパイで動く超マシン』シリーズは、DEC PDP-10マシンのTOPS-20 OS活用テクニックなどを 解説したシリーズ本で、本書はシリーズの第1巻となります。

本書は、DECのPDP-10マシンで動作するレトロなOS TOPS-20について記載したものです。

ラズパイで動く超マシン シリーズ
巻数シリーズ 書籍
1 DEC TOPS-20 レトロOSワールド
2 DEC TOPS-20 プログラミング言語 その世界
3 DEC TOPS-20 太古のPDP-10 アセンブラの世界
4 DEC TOPS-20 伝説の8080エミュレーターとALTAIR
5 DEC TOPS-20 レトロなOSの散歩道
6 DEC TOPS-20 OS起動と停止のギミック
主な内容を下記に示します。
  • エミュレーターの導入と設定方法
  • TOPS-20の基本的なコマンド解説
  • TOPS-20の世界を旅するヒント

TOPS-20は、1970年代から1980年代にかけてUNIXと共に人気のあったOSです。 偉大な先人が開発したTOPS-20 OSは、歴史的に貴重なソフトウェアの宝庫です。

PDP-10はもう現存していません。 そこで、TOPS-20 OSを復活させるために、Linuxマシンでエミュレーターを実行して 本物のTOPS-20用バイナリーコードを実行します。

本書では、Panda TOPS-20 Distributionを利用してKLH10というPDP-10エミュレーターを使います。 そして、「TOPS-20 Monitor 7.1」を起動します。

Linuxマシンを準備して、実際にTOPS-20を体験してください。 本書では、低価格の小型ボードコンピューターRaspberry Piを使用しますが、 Windowsで使用していた古いパソコンでも良いです。

TOPS-20との出会い

筆者は1976年にTOPS-20と出会いました。 そして、素晴らしいオペレーティングシステムだと感じました。 TOPS-20が初めてのコンピューターだったら、この体験が自分の「ものさし」の基準となって、 何も感じなかったと思います。

しかし、幸いなことに筆者が初めて使ったコンピューターは、 大学の大型コンピューターTOSBAC-3400で、パンチカードによるバッチ処理方式でした。 そして、こういうものがコンピューターなんだと考えていました。

大学3回生のときに、コンピューターがDECSYSTEM-2040にリプレースしTOPS-20が走りました。 なんと、タイムシェアリング(TSS)方式でターミナルに向かってひとりで独占して使っているかの ごとく対話方式で使えました。この出来事が、自分の「ものさし」の目盛りを変えました。

ここを読んでいるあなたは、「バッチ処理とTSS処理の違いではないか」と突っ込みを入れているでしょう。 UNIXやLinuxを使っている人にとっては、TSS方式は当然使いやすいと考えます。 しかし、その違いだけではありませんでした。

というのも、1980年代後半にUNIXワークステーションで仕事をしたとき、 UNIXも使いやすいけどTOPS-20のような素晴らしさや感動はありませんでした。

TOPS-20との再会

1980年代、TOPS-20はPDP-10の開発終了によって終焉を迎えました。 それに対して、移植性の高いUNIXはいろいろなマシンで使われて今日に至っています。 TOPS-20は世の中から消えましたが、筆者の頭の片隅に記憶として残っていました。

それから、時が流れて2018年のことです。 アマゾンで『れがしーなOS達: ラズベリーパイで試す DEC社 TOPS-20』という本を発見しました。 この書籍は、DEC TOPS-20をRaspberry Piで実行する方法について書いてあります。

Raspberry Piで環境を構築して、早速使ってみると不思議なことにTOPS-20の使用感を手が覚えていました。 幸運なことにTOPS-20の資料はインターネットに公開されていますので、 マニュアルなどを調査して使い方を調べ始めました。 TOPS-20と再会するきっかけとなった 『れがしーなOS達: ラズベリーパイで試す DEC社 TOPS-20』の著者に感謝します。

筆者がいろいろ調べた成果を電子書籍にまとめることにより、 誰かの役に立つのではないかと考え、本書『超マシン復活 DEC TOPS-20 レトロOSワールド』を執筆しました。

本書の主な対象読者

本書は、下図に示すような読者を対象としています。

  • ソフトウェア技術者をめざして情報技術を学ぶ学生
  • 経験の浅い新人の技術者
  • 経験豊富なベテラン技術者

情報技術を学ぶ学生は、 LinuxやWindowsでソフトウェアについて学ぶ機会が多いと思います。 かつて存在した素晴らしいTOPS-20の世界をぜひ体験して、その違いを感じてください。 TOPS-20は、『システムを学びやすく使いやすいものにする』という設計哲学があるので、 比較的簡単に使えます。

経験の浅い新人技術者は、 ウェブシステム、事務処理、組み込みシステムなどのいくつかの開発を経験したかと思います。 システム開発における自分の「ものさし」を持つことが大事です。 そして、いろんなシステムを経験することにより「ものさし」に磨きがかかります。 UNIXやWindowsと異なるTOPS-20を体験してください。

経験豊富なベテラン技術者あなたは、 数多くのシステム開発を経験していると思います。 そして、自分の「ものさし」の基準が確立しているでしょう。 もし、TOPS-20を使用する機会がなかったとしたら、 TOPS-20を体験して「ものさし」を調整することをお勧めします。 遠い昔にTOPS-20を使った技術者ならば、その当時を振り返って「ものさし」を確かめてください。

本書の目的

本書の目的は、レトロOSワールドである素晴らしいDEC TOPS-20を体験して、 他のシステムとの違いを感じて、自分の「ものさし」を調整することです。

本書では、エミュレーターの導入と設定方法やTOPS-20の基本的なコマンドについて解説します。

TOPS-20の魅力は、本書だけでは語り尽くせません。 TOPS-20ワールドは、ワクワクでいっぱいです。 この本を出発点として、探究心と好奇心の扉を開いて先人の知恵を探す知的冒険の旅へ出発してください。

ある技術者の書斎

探究心と好奇心の扉を開いて
知的冒険の旅に出かけよう